Heeley L’Amandiere

Greens and hyacinths brighten up the long-awaited spring
待ち焦がれた春を彩るグリーンとヒヤシンス

Heeleyを知ったのは、On the ScentのPodcastだった。わたしも大好きなビューティジャーナリスト Sali Hughesをゲストに迎えた回で、Saliが最後の最後に紹介したのがHeeleyのL’amandiereだった。彼女はこの香りを何年も愛用しているそうで「なにを付けたら良いか迷ったときはこれ(か、Ormonde JayneのOrmonde Woman)。すごく特別な香りだから、付けていても誰も言い当てられない」と話した。彼女が愛用しているものは黒いラベルのExtraitだそうだが、残念ながらこれはすでに廃盤になっており、現在は白いラベルのオードパルファムのみ販売されている(まだネットで探すとExtraitを販売している店もあるようだが、公式には販売されていない)。


Heeleyは、イギリス人のJames Heeleyによってフランスで立ち上げられたブランド。彼はもともとプロダクトデザイナーで、パリの花屋のプロジェクトを務めた際にアニックグタールに出会い、香りの世界に足を踏み入れた。Heeleyの香りは、どれも自然を忠実に表現している。木々や花々が風にのって香り、わたしたちの鼻腔を驚かせるその瞬間を切り取ったような、躍動感に溢れた自然の香りだ。彼は自身の経験や記憶からインスピレーションを受けることが多いと言い、彼のデビュー当時の香りはミントや柑橘が多く使われている。ミントはイングランドの庭を思い出させるのだそうだ。

L’amandiereは、晴れやかな春の訪れを思わせる。グリーンアーモンドとミントのオープニングはみずみずしくフレッシュで、長い冬の間に待ち焦がれていた植物の息吹のようだ。そして花々が少しずつ咲き始めるように、ゆっくりとローズやブルーベル(日本人にとっての桜のように、イギリス人に春の訪れを知らせる花)、そしてヒヤシンスが香り始める。ブルーベルもヒヤシンスも似た系統の香りがするからか、ミドルノートはほぼ完全にヒヤシンスだ。甘くてパウダリーなのに、どこかひんやりした青臭さを感じさせる。リッチなフローラルノートなので、普段この系統の香りをまとわないわたしは少し身構えたが、グリーンノートとのバランスが良く、1日を通してとても上品に香り続けた。むんと酔わせてくるフローラルではなく、グリーンノートと共に爽やかな春風にのって香ってくる花々のような軽さがある。そして6−7時間ほど経つと、ほのかなヒヤシンスの香りを残しながら、ゆったりとしたムードのムスクが残る。ほっこりと心があたたまるような、安心感を与えてくれるムスクの香りは、勢いのあるトップノートからは想像できないエンディングだ。

この香りは、3月頃 肌を刺すような寒さが和らいだ晴れの日に付けたい。少しずつ植物たちが戻ってきたまだ肌寒い空気を吸い込みながら、少し薄手のコートで街を歩く。ふわり、ふわりと青みを含んだヒヤシンスが香る。そんな日を、心から待ち焦がれている。

I pass through almond trees filtering the morning sun. In the dew ladened grass stretched out before me, as if in a dream, a multitude of wild flowers are in simultaneous bloom …

100ml £140 / 24,200yen