Fragrances from Experimental Perfume Club

Experience unique, innovative and creative scents you’ve yet to discover
これまでに体験したことのないコンセプトのフレグランス

Experimental Perfume Clubは、ロンドンのCovent Gardenに店舗を構えるニッチフレグランスブランド。創設者のEmmanuelle Moeglinは国際的に有名な調香学校 ISIPCAで調香を学び、その後欧州だけでなく世界中を舞台に活躍し、2016年にExperimental Perfume Clubを立ち上げた。創設当初はフレグランスブランドではなく、その名の通り「香りを探求する」スタジオで、ワークショップなどを中心に香りに関する知識を提供していたが、2018年に自社のフレグランスを発売した。

EPCのフレグランスには、ふたつのコレクションがある。

◯ Essential Collection
テーマとなる原料の香りをダイレクトに楽しめるコレクション。ボトルの色で香りの系統がカテゴリ分けされており、イエローはフレッシュなトップノート、ピンクはメロウなミドルノート、ブルーは重厚なベースノートとなっている。これらは単独で付けても楽しめるが、レイヤリングしてより自分らしい香りに調節することもできる。また、自宅で香りを混ぜてオリジナルのフレグランスを作る「Creation Set」も販売されている。

◯ Signature Collection
ブラックのボトルのSignature Collectionは、上記のEssential Collectionを2〜3種類ブレンドしたもので、より深みのある複雑な香りに仕上がっている。自社のフレグランスを混ぜて別の香りを作る、というアイデアが斬新だ。驚くのは、調合の割合で香りの感じ方がまったく異なること。例えば、Velvet Incenseという香りはEssential CollectionのBergamot IncenseとAmber Irisが7:1の割合で配合されているが、Ambre Epicesという香りはまったく同じふたつのフレグランスが2:6の割合で配合されている。つまり、前者はトップノートの比重が多いため爽やかに香り、後者はより重厚でパウダリーな香りが立つのだ。

それぞれのコレクションのディスカバリーセットが販売されているため、気になる方はまず初めにこちらを試してみるのが良いかもしれない。

◯ Essential Collection
・Bergamot Incense: ベルガモット、レモン、マンダリン、柚子といった柑橘のさわやかさの中に、フランキンセンスが柔らかく香る
・Fig Neroli: フィグリーフ、バジル、ネロリ、プチグレンのブレンドがフレッシュなグリーン系フレグランス
・Cardamom Moss: カルダモン、ターメリック、ジンジャーといったスパイスと、たっぷりのアンブロクサンが肌のように香る
・Jasmine Osmanthus: ジャスミンと金木犀をブレンドした、まるでブーケを抱きしめたときのようなフレッシュなフローラル
・Rose Rhubarb: 香り高いモロッカンローズと甘酸っぱいルバーブが織りなす、クラシカルに転ばないモダンなローズ
・Tonka Sesame: トンカ、セサミアブソリュート、アーモンドのクリーミーで香ばしいグルマン
・Sandalwood Musk: サンダルウッド、ホワイトムスクにほんの少しのピンクペッパーコーンがピリッと香る、大人のムスク
・Amber Iris: 甘いアンバーにアイリスのパウダリーな気高さがプラスされた、クラシカルなフローラル
・Cedarwood Absinth: シダーウッドにパチュリを加えた、ウッディでレザー味のあるハンサムな香り

◯ Signature Collection
・Velvet Incense (Bergamot Incense × Amber Iris): 穏やかに香る柑橘とフランキンセンスにパウダリーな上品さが加わったクセになる香り
・Sable Gris (Cardamom Moss x Sandalwood Musk): 「グレーの砂」という名の通り、アンブロクサンとスパイスがビーチの潮気を感じさせる人気の香り
・Fleur d’Ambre (Jasmine Osmanthus x Amber Iris): Jasmine Osmanthusの少女っぽいフローラルの香りに、大人の気品が加わったかのような、大人のフローラル
・Rose Charcoal (Rose Rhubarb x Sandalwood Musk): 単体だとグリーン寄りのフローラルであるRose Rhubarbに、ムスクの重厚感が加わった深い香り
・Iris Carmin (Fig Neroli x Amber Iris): フレッシュなグリーンノートとパウダリーなフローラルのバランスが良い、アワード受賞歴のある香り
・Black Nagarmotha (Cardamom Moss x Tonka Sesame x Cedarwood Absinth): Tonka Sesameの甘さにキャンプファイヤーのようなウッディノートが加わる
・Santal Nuit (Bergamot Incense x Sandalwood Musk): サンダルウッドのベースに、柑橘のジューシーなノートが軽やかさをプラス
・Ambre Epices (Bergamot Incense x Amber Iris): 甘くクラシカルなアイリスに、メロウなフランキンセンスとフレッシュな柑橘が香る
・Tonka Extraordinaire (Tonka Sesame x Amber Iris): グルマンは好きだが、フローラルな雰囲気もまといたいという人におすすめの大人のグルマン

好きな香りはいくつもあるのだが、一番肌に馴染むのがCardamom Moss。カルダモン、ジンジャー、サフロン、ターメリックといった芳しいスパイスのピリッと爽やかなトップを包み込むように広がるアンブロクサンのあたたかみのある甘さがたまらない。もちろん単独で楽しめる香りだが、Essential Collectionのトップノートにあたる香りなので、妙に重厚なベースノートが含まれていないからこそのスッキリ感が新鮮だ。

スパイシーなトップノートが落ち着くと、アンブロクサンが肌に馴染み、まるで肌の一部かのようにやさしく香る。アンブロクサンが配合されている香りは「My-Skin-but-Better Scent」と形容されることも多いが、Cardamom Mossにもその要素がある。わたしはこれを浴びるように付けて、最後に服にも振りかける。そうすると、肌の上ではアンブロクサンがメインで香り、服にはスパイスの爽やかさがほのかに残り、バランスが良い気がする。

スパイス系の香りは癖があるものが多くて苦手に感じていたが、これは爽快感のある軽いスパイスなので万人受けしやすい。店舗に足を運ぶ人々からも「この香りはユニーク」「これまでに嗅いだことがない」「とてもクセになる」と評判が高い。Cardamom MossとSandalwood MuskをブレンドしたSable Grisは夏季のベストセラーでもあった。Cardamom Mossよりももう少し重さが欲しい、という人にぜひ試して欲しい。アンバーグリスの潮気をうまく再現していて、マリン系ではないビーチ系フレグランスを探している人にもうってつけだ。

わたしは今年の春から、EPCを手伝わせていただいているのだが、これほどクリエイティビティを刺激されるフレグランスブランドを他に知らない。一般的にフレグランスは「調香師が完璧にブレンドしたものを付ける」ものだが、EPCは付ける側に完成形を委ねてくれる。レイヤリングするのも楽しいが、Creation Setを購入して自分の好きに香りをブレンドして楽しんだり、わたしも2021年に受講したオンラインコースを受講して香りの知識を深めたりと、ただ与えられたものを付けるだけではない、積極的に香りを楽しむことを後押ししてくれるブランドだ。店舗はビューティショップが多く立ち並ぶCovent GardenのSeven Dialsにあるので、ロンドンに来ることがあればぜひ立ち寄って欲しい。創設者であるEmannuelle Moeglinはもちろんのこと、ショップのスタッフも全員知識が豊富でフレンドリーな素晴らしいメンバーだ。季節限定のブレンドも発売されるので、そちらもお見逃しなく。