Innocence in a bottle
ボトルに詰まった純粋さ
わたしはウッディ系のベースが効いている香りや、ずしりと重いグルマン系の香りを好んで選ぶことが多い。擬人化すると、世の中の酸いも甘いも噛み分けた中年、みたいな香りが好きだ。なにか特定のものの香りというより、いろいろなものが入り混じって複雑に交差しているような、ちょっとひねりがあって「お、そういう方向で来るのか…」と唸らせてくれるような。
そんなわたしが、珍しくとてもかわいらしい香りに心を奪われた。BDK ParfumsのBouquet de Hongrieだった。
トップはストロベリーや洋梨、カシスといったフレッシュで甘酸っぱいフルーツが踊るように香る。すぐにベルベットのように滑らかなローズがそれを包み込み、イノセントな少女が脳裏に現れる。こんなにもかわいらしくて、儚げで、それと同時に若い活力に溢れたピュアな香りを纏うのは、いったい何年ぶりだろうか。自分に似合うか、と言われるとだいぶ躊躇してしまう部分があるけれど(わたしは学生時代からヤンキー顔なので、かわいらしい系統のファッションやメイクは似合わない)、だからといってこういった香りで自分を縁取りたい日がないわけでもない。
シヤージュは、清潔感のあるフローラル調の石けんのような、柔軟剤ともいえるような香り。鼻を近づけて香ると、ふと日本のヘアサロンを思い出す。そういえば、日本にはこういう香りのヘアスタイリング剤が多い気がする。「フローラルブーケ」とか「フルーティフローラル」と呼ばれる分類の香りで、清潔感とフェミニンさを兼ね揃えた香りは、日本の若者にも受けが良いのだろう。こんな香りはこれまでに嗅いだことがない!という衝撃はなく、むしろなんだか懐かしくなる香りだ、と思ったのはきっと日本を思い出すからだ。
ヘアスタイリング剤と大きく違うのは、肌の上で香りが落ち着くと、ほのかにアンバーやムスクのセンシュアルさが顔を出すところだ。どちらかというとリニアフレグランス寄りの印象で、ミドルノートからベースノートへの変化はさほど感じられず、トップのフレッシュなフルーツたちが舞台袖に引っ込んだあと、センシュアルさを含むフローラルが静かに存在感を主張し続ける。これを付けていると「なんの香水つけてるの?」ではなく「なんか良い香りがする」と言われそうなほど、自然な清潔感を演出する。さて、わたしはこの香りをいつ纏おうか。
100ml £155 / 27,500 yen
She’s getting ready. It’s a beautiful day. The sky is blue. She puts her naked foot on the floor and like a dancer, travels the distance of the mirrored hallway to the dressing table. It’s one of her favourite spots. She likes getting pretty there. There are only flowers from the garden, and both her hands, fresh and clean, which seem to spin around them. Her right hand, agile and light, grabs her powder, then a bottle of perfume. Her left hand clutches eye shadow and nude lipstick. She then moves on to the closet, where she picks a light dress and fixes a rebel strap. She slides on pair of heels and fastens a belt around her waist. Just like every morning, she walks towards her balcony full of flowers. It’s on the 4th floor and overlooks the gardens of Palais Royal. She is happy and thinks of her day ahead, smiling.