Floraïku Paris : Shop introduction

A French take on the scents of Japan which stimulate your intellectual curiosity
知的好奇心を刺激する 日本にインスパイアされたフランスの香り

Floraïkuは、MEMO Parisの創設者でもあるClara MolloyとJohn Molloyが2017年に立ち上げたフランスのフレグランスメゾン。「Floraïku」とは「Flora(フレグランスに閉じ込めた自然の香り)」と「Haiku(俳句)」を掛け合わせた造語で、わたしはそれを「(香りとして)纏える俳句」というような意味合いで理解している。お気付きのとおり、Floraïkuは日本にインスパイアされたフレグランスメゾンなのだ。

香りは「お茶」「生け花」「香道」といった3つの大きな軸に沿って構成されており、すべてのフレグランスには、英語の俳句が添えられている。これは創設者のClaraやその友人である作家によって書かれたもので、オリジナリティが感じられる。50mlのフレグランスは「弁当箱」に入っており、蓋を開けると中にインパクトの大きい富士山や妖怪のイラストが描かれている。それぞれのボトルのキャップ部分(これにも秘密があるのだが、それはのちほど)に描かれた絵は、トラディショナルな日本をテーマにしていながらも、どこかサブカルチャーを連想させるポップな印象だ。この、日本という国の振り幅を体現しているようなバランスが面白い。藍染や、芸子さんの口紅を思わせるようなボトルの絶妙な色合いも美しく、飾っておくだけでも眼福を得られる。


こだわりを持って大切に展開されている店舗は、まだ世界でもさほど数は多くない。パリの旗艦店の他、ロンドンではHarrodsのSalon de Parfums、台湾ではSOGO Fuxing、ジャカルタではPlaza Indonesiaの中に店舗を構えている。

内装は、日本の旅館をイメージしている。それだけでなく、接客も日本の「おもてなし」精神を意識していて、店舗によってはお茶とおしぼりが出され、ひとつずつ手渡されるムエットを木製のホルダーに立て掛けながら、自分の好きな香りを探求することができる。


ある冬の日、わたしはHarrods内の店舗を訪れた。とても親切な販売員が、わたしの好きな香りと苦手な香りを聞いた上で、興味があった「お茶」のシリーズから香りを試させてくれた。全体的にFloraïkuの香り立ちは控えめで、それもまた日本人の気質を想起させた。それぞれのフレグランスには3つのノートしか書かれておらず、それが必ずしも日本らしい香料というわけではないのに(例えばヒノキや柚子など)、完成した香りの雰囲気がどこか日本の情景をふっと思い出させる。まるで、脳裏で「日本の情景 高速紙芝居」が繰り広げられているように、パッパと現れては消えてしまうのだが、確実に日本の空気を感じるのだ。


50mlサイズのフレグランスは、この通称「Bento Box」に入っており、携帯に便利な10mlサイズも付いてくる。実はボトルの上部に配置されているキャップは、このミニサイズのフレグランスを入れるホルダーになるというのだから面白い。その場合、50mlボトルは同梱されているゴールドのキャップを付ければOK。好きな香りを持ち歩きたいわたしは、この仕様に大変心が踊った。


わたしは、あまりディスカバリーセットを買わない。本や音楽も同じなのだが、同じ作家やアーティストの作品がすべて刺さるとは限らないし、むしろ好きなものだけつまみ食いしたいタイプだから。でも、実際に店頭でFloraïkuの香りをほとんどすべて試させてもらって、これは苦手だな、と思う香りがひとつもなかった。ローズは苦手なのに、ローズがメインとなっている香りも「これすごく良いですね、何が入っているんですか?」なんて聞いていた。すべての香りを肌で試したかったので、迷わずディスカバリーセット(1.5ml×11種 £25.00)を購入した。


ディスカバリーセットをには、旅館のお品書きみたいなパンフレットも同梱されている。ひとつひとつの香りに添えられた俳句と、3つのキーノートが書かれている。これを眺めながら、この俳句はどんな情景をイメージしながら書かれたのだろうとか、その情景にこの香りが漂っていたら、なんていうことを考えながら香りを愉しむ。なんて粋なんだろう。

香りを通して、日本の文化を知る。店舗では、つかの間の日本を経験する。日本からこのようなブランドが生まれなかったことが少し残念でもあるが、フランスのブランドがここまで日本を熟知し、フランスの感性とその技術を以てブランド化を実現したということは素晴らしいと思うし、日本人として嬉しく思う。店舗のある地域に旅行に行く際はぜひ訪れて欲しい。