Floraïku Sand and Skin

Surprising journey through the scent reminds me of Japan
意外性のある香りの変化 −日本を感じるフレグランス

Floraïkuのディスカバリーセットを購入した際に、セットに含まれていないがとても惹かれる香りがあった。Sand and Skinという、発売されたばかりの香りだ。名前からはアクアティックな香りかと思いきや、まったく想像を超える香り立ちだったので驚いた。

Sand and Skinは、Floraïkuの「香道」のシリーズにカテゴライズされている香りで、濃紺のボトルに入っている。一日の終わりに海辺で夕日に照らされる貝殻をデザインしたキャップのデザインもアーティスティックだ。スプレーすると、バニラやベンゾイン、ラブダナムのようなどことなくウッディな甘い香りが立ち上る。深みのある甘い香りにも関わらず、どこか初夏の爽やかなそよ風を感じるような、軽い甘さなのにも驚いた。夏に付けても酔わないであろう甘さ、と言えば伝わりやすいかもしれない。

30分後くらいに香ってみると、一瞬で、日本の記憶が蘇った。寺。イランイランと燃えた木のような匂いが入り混じったような香りは、まさに寺だ。瞬時に、伊勢や鎌倉で境内から寺の中を眺めているときの、あの空気感を思い出した。ここでは甘みはほとんど感じず、お焚き上げの煙と、古い木、線香などが入り混じったような香りがする。これはとても如実にアジアを表現した香りだと感じた。

なるほど、この香りはこんな感じで落ち着くのか…と思いきや、また1時間ほど経過して香ってみると、甘いバニラの香りがした。トップで感じたウッディな甘さも、ミドルで感じた寺感もない。ただただ心地良い、あたたかい甘さが心をやさしく包む。何度か試しているうちに、寺からバニラの甘さに移り変わる過程も面白いということに気付いた。着物が似合いそうなエキゾチックでミステリアスな香りが、ひとびとの好奇心を刺激する。甘みのない寺の香りは、付けて30分ほどで堂々と香りの中央に鎮座する。そこに少しずつ甘さがじわじわと重なり、バニラにその座を譲る。

フレグランスは時間の経過によって香りが変わるものだが、ここまで手品みたいな香りにはあまり出会ったことがなかった。特に、ミドルで甘さが消えるこのトリックは一体なんなのだろう。神隠しにあったような、不思議な感覚に陥る香りだ。

BACK FROM A SWIM
THEY MEET AGAIN
SAND AND SKIN