Pillow spray for those who resist pillow sprays
アンチピロースプレー派のためのピロースプレー
寝る前に香りで心地よい空間をセッティングする、という「ピロースプレーの概念」に惹かれる。好きな香りをまとって眠る いわゆる「寝香水」とも違う、まるで電気のように交感神経のスイッチをオフにするという習慣。これまでいくつかピロースプレーを試してきたが、どれもしっくりこなかった。心身をリラックスさせるラベンダーや鎮静作用のあるジャスミンやサンダルウッドがブレンドされていることが多く、なんとも個性的で深い香りにリラックスして身を任せるどころかムズムズする違和感を覚える。大ヒットしたThis Worksのピロースプレーも、わたしにはあまり響いてこなかったが、インフルエンサーがこぞって「眠る前に香りで空間を整える」という習慣を推進しているのを見て羨ましく思った。
そんなわたしがここ数ヶ月愛用しているのが、aimeのSleep Mist。これまで試したどのピロースプレーとも異なるユニークな香りが刺さった。aimeは2018年に立ち上げられたフランス生まれのブランドで「美は内側から」というコンセプトのもと、サプリメントやスキンケアアイテムを展開している。現在ではメイクアップ商品やフレグランスなどの商品も加わり、パリのマレ地区にある旗艦店にはヘルシーなドリンクが楽しめるこぢんまりとしたカフェスペースも備わっている。
aimeはイギリスでも販売されているため目にしたことはあったが、6月に初めてパリの店舗に立ち寄った。シンプルでスッキリとした店内には生花が飾られ、良い香りが漂っていた。スタッフもフレンドリーで、詳しく商品を紹介してくれた。わたしが興味を惹かれたのはフレグランスだった。GlossierのYouのように、香りはひとつしかなく、それも何の香りと形容し難い「my skin but better」風の香りがするものだった。フレグランスオイルも良いな、と考えながらふと隣に目をやると、Sleep Mistなるものが目に入った。シュッと空間にひと吹きして、その個性的な香りの虜になり、小さいサイズをお試しにと買ってみたのだが、今となっては大きいサイズを買えば良かったと後悔しているほど気に入っている。
Selfridgesの商品ページによると、トップノートはホワイトフローラル、ミドルノートはシトラスとオレンジブロッサム、ベースノートはカンファー、シトラス、オレンジブロッサムとなっているが、実際にはフローラル感は薄く、カンファーのシャープなグリーン味も感じない。
わたしの印象では、ネロリとバニラのあたたかみのある香りに感じる。まるで、寒い日にブランケットに包まったときのような、体の緊張がほぐれる安心感。ネロリの穏やかな香りと、ベースに残る甘い香りにほっとする。シュシュっとベッドリネンにスプレーして横になると、体が素直に眠りに応じる。まるで犬の躾をするようにこの香りがしたら眠るのだと体に覚え込ませるかのように毎日使っていたら、本当に眠気を感じるようになったから不思議なもの。香りは淡く、5分もすれば消えてゆくのだが、その間に眠りに落ちてしまうのだから問題ない。
毎日サプリや薬を飲むとか、同じ時間に何かをするとか、そういった規則的なことが苦手なわたしが、毎日このスプレーを欠かさないのは、一日の終わりにこの香りを楽しみたいから。寝る前にしか楽しめない、短くも大切な香りなのだ。
ちなみに、パリのaimeを訪れた際、買い物をして帰ろうとしたら大雨が降ってきた。傘もないし、どうしようか…と思っていたら、スタッフの方が(ありがたいことに英語で話しかけてくれた)「雨が止むまでカフェスペースでゆっくりしていって」と座らせてくれた。お店の前で雨宿りをしている女性にも声をかけ、店内に招き入れ、雨宿りをさせてあげていた。より一層、aimeというブランドが好きになった。
100ml €25.00