Smell of tranquillity and serenity
静寂とやすらぎの香り
香港生まれのフレグランスブランド ONE DAY。調香師のMichael Wong氏により立ち上げられたブランドで、Oolong Teaという香りが2022年 Art and Olfaction AwardのArtisan Categoryで優勝したことで広く知られている。ONE DAYと言えばティーフレグランス、というほど、Oolong Teaをはじめとしたお茶をテーマにしたフレグランスが人気だが(そしてその香りも噂通り素晴らしい)、今日はあえてあまりレビューされることの少ない香りについて書きたいと思う。
ONE DAYにはEthos of Citiesという、世界の様々な都市をイメージしたフレグランスのシリーズがある。そのなかでも、KYOTOという香りの素晴らしさについて語らせてほしい。
「京都をテーマにした香り」と聞くと、インセンスが効いたウッディな香りをイメージしたのだが、ONE DAYのKYOTOはわたしの想像とはまったく違った。爽やかな春の日のようなベルガモットとネロリのトップノートは、やわらかなリネンや穏やかな水辺を思い出させる。心が落ち着くと同時に、気分が晴れやかになる。そこから少しずつフランキンセンスの甘さと、苦味のあるガイアックウッドが立ってくる。この「爽やかさ」「甘さ」「苦みのあるウッディさ」のバランスが素晴らしく、何度嗅いでも飽きない香りに仕上がっている。香りが落ち着くと、ムスクやサンダルウッドのセンシュアルさも立ち上ってきて、最初から最後まで香りの変化がとても美しい。
至近距離で嗅ぐとその香りをひとつひとつ分解することができるのだが、ふわりと残るシアージュにはさほど苦みを感じない。やわらかなフローラル調のネロリと、葉っぱの青臭さを感じさせるようなベルガモット、そしてほのかなウッディノートがゆらゆらと漂う。清潔感のある香りだがパウダリーさはなく、植物の繊細さと荒々しさを一度に感じられる香りだ。上品で控えめ、決して強く主張する香りではないのに、一日を通してゆっくりと香る。忘れたころにふわ、ふわ、と存在感を醸し出す。これを付けていると、自分の女性性が強く出る気がする。なんだか、そんなことはないのに、自分が穏やかでエレガントな女性になった気分にさせられるというか。
「京都をイメージした香り」と聞いて勝手に寺系フレグランスを想像していたのだが、まったくそんな型にハマることのない、新しい京都を見せてもらった気がする。
A stick of incense ignites the smoke. The temple bell rings from afar. People wearing sandals look at pieces of Japanese and cloth in the shopping street of Edo architecture. The fabric glides over your fingertips to leave a cool touch.
一筋の線香が煙を立てる。寺の鐘が遠く鳴り響く。草履を履いた人々が、江戸の商店街で和服や布地を見ている。布が指先に滑らかに触れ、冷たい感触が残る。
Rice stalks and rushes interweave and stack mats, and sit down to complete the tea ceremony quietly. Life is a ritual.
稲穂と葦が織り交ぜられた畳を積み上げ、静かに茶道を行う。人生は儀式である。
Breathe in the woody scent of the room and let peace cover you. The wave of everything. Walk slowly and you will hear the distant bell.
部屋に漂う木の香りを深く吸い込み、平和に包まれる。すべての波に身を任せ歩き、ゆっくりすすめば遠くの鐘の音が聞こえる。
A stick of lit incense in Kyoto cabins, bells rang afar. People in wooden clogs looking at bolts of cloth in stores, sheets slide off your fingertips, smooth and glacial.
京都の小部屋で一筋の香り立つ線香、遠くの鐘が鳴り響く。人々が木綿を見る商店で、下駄の音が鳴り響く。布が指先からなめらかに滑り落ちる。氷のように冷たい。
Be clothed, and start brewing. Let go of your burdens. Tea drinking is a ceremony. Life is a ceremony. Rest your knees on tatami and take a moment of clarity, ceremonial rituals make moments in our temporal being.
身を包み、茶を点てる。負担を手放す。茶道は祭式であり、そして人生も祭式である。畳に膝をついて、一瞬の清明を迎え、儀式は時間の中の瞬間をつくる。
Breathe. Smell the woods. Be overflown by peace.
Pace yourself slowly, and you’ll hear the distant sounds.
深呼吸し、木の香りを嗅ぎ、平和に満ちる。
ゆっくりと歩いていけば、遠くの音が聞こえてくる。
60ml HK$ 1,050.00