Maison Francis Kurkdjian Baccarat Rouge 540 Eau de Parfum

Cuddle up with a warm amber
あたたかなアンバーに包まれて

いま、ロンドンで一番付けている人が多いフレグランスのひとつがMaison Francis KurkdjianのBaccarat Rouge 540。良い香りがすると巷で噂のRihannaも付けているということもあり、TikTokで相当バズった香りなのだそう。街を歩いていてもよくこの香りを纏っているひとに出会うことが多々あり、その人気っぷりを肌で実感する。

2021年の夏、わたしは友人に連れられてSelfridgesにあるMaison Francis Kurkdjianのカウンターを訪れた。友人が「これ、すごく良い香りなんだけど、高いから迷ってるの」と紹介してくれたのが、Baccarat Rouge 540だった。友人が浴びるようにテスターをスプレーし、カウンターをあとにした数時間後、彼女からとても良い香りがすることに気付いた。他にもいくつかフレグランスを試していたので、どの香りだろう?とあちこちくんくん嗅がせてもらったら、これだった。この香りのユニークな特徴は、付けた直後よりも、さらには肌に付けた香りよりも、服に残った香りが最高に良い、ということかもしれない。

もちろん、肌に残った香りも良い。シュッとスプレーすると、舞台袖から踊り子が散らばりながら出てくるように、ジャスミンとサフロンの華やかな香りがぱっと空気を明るくする。時間が経つにつれ、フローラルの華やかさを含んだ焦がしキャラメルのような香ばしい甘さがぐんぐん深まる。「アンバーグリスが入っていると言いながらも、実はアンブロクサンだと思う」という意見も多いが、個人的には潮っぽい香りを感じるので、本当にアンバーグリス(もしくはそのアコード)が入っている可能性もあると思っている。ただ甘いだけでなく、潮っぽさ、ほのかな酸味、ファーの冬の森を思わせるキーンとした冷ややかさがブレンドされて、一般的なグルマン系フレグランスとは一線を引くユニークな香りに仕上がっている。

これを朝付けると、夜まで香りが持続する。主張しすぎることなく、香りのあたたかいオーラが体全体を包み込んでくれているような香り方で、どんなシーンでも使いやすい。香りを纏っているというより、わたしという人間を表現する香りという感じで、とてもしっくりきた。服に残った香りは何日も持続し、クローゼットを開けるとため息が出るほど良い香りがする。わたしはこのクローゼットに残った香りで、購入を決めた。病院に採血に行ったとき、服に残った香りを看護師に褒められた。「あなた、すごく良い香りがするんだけど!」と言うので驚いて「え、わたし香りますか?」と言ったら「すごく良い香り!」「これBaccarat Rougeなんですよ」とひととおり盛り上がった。

わたしが購入したのは35mlサイズだが、大切に使っても数ヶ月で使い切ってしまった。2本目を購入し、より一層大切に使ったが、こちらも数ヶ月で残り数mlになってしまった。3本目を購入しようと思っていたものの、当然コストパフォーマンスで言えば70mlの方が良いので、70mlが買えるようになるまで我慢しよう…と凌いでいた。けれどここ最近、この香りを付けている人が多いので、街を歩いていればどこかしこでこの香りを楽しむことが出来るようになった。そしてなんとなく、常にこの香りと一緒にいたいという気持ちが薄れてきた。香りは、そのときの自分の気分とかっちりハマらなくなると、不思議とチグハグ感を感じるようになるもの。好きな香りを何年も使い続ける、ということを繰り返していたわたしとしては、1年と短いrelationshipだったが、2本目を使い切った時点で心がふっと離れた。それでも、今もふと街でこの香りがすると振り返ってしまうし、クローゼットに残ったほのかな香りもほっとさせてくれる。これからもずっと心に残る香りだ。

70ml £215 / 38,390yen

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