the essence : Book Review

Inspirational book for fragrance lovers
フレグランス好きのためのインスピレーショナルな一冊

調香やフレグランスの世界を知るずっと前に買った「The Essence」。2020年に発売された比較的新しい本で、ロンドンでもセレクションにこだわりのある書店に行くと置いてあることも多い。この本は、読み手のフレグランスに関する知識のレベルを問わず、ただただ香りというものがいかに楽しいものか、ということを再認識させてくれる。ずっしりと重たく大きなハードカバーで、サラサラとしたマットな紙質と、読みやすいフォント、洗練された写真が感覚を楽しませながら、細かな知識がわたしたちの好奇心をくすぐる。

序盤では香りを感じる嗅覚の仕組みや、「季節の匂い」など身近な匂いについて触れられていて、そこからさまざまな香料の簡単な紹介や、天然香料の抽出法などについて書かれている。それぞれの項目が深堀りしすぎておらず、写真やイラストとともに端的に(且つ大切な部分をおさえて)書かれているので、飽きることなく読み勧められる。更には香りの歴史、近年のフレグランス市場、香りと経済、さまざまな文化と香り、など興味深いトピックが並ぶ。

そういった面白い読み物の合間に、フレグランスメゾンや調香師、香りに携わるプロフェッショナルたちのインタビューなどが交えられており、ページをめくると一体次はどんな世界に連れて行ってくれるのか、とワクワクさせてくれるのがこの本の素晴らしいところだ。香りについての知識をみっちりと教え込まれたと思ったら、メゾンのインタビューが始まり、またレクチャーに戻り、次は写真が視覚を楽しませてくれる。後半はインタビューが中心だが、全体的な構造がユニークであることは間違いない。

文体が読みやすいのも、気に入っている点だ。小難しい言葉を使わずに、ときにはポエティックな表現で想像力を掻き立てる。

もうひとつわたしが気に入っているのは、紹介しているプロフェッショナルたちのニッチなセレクションだ。天然香料だけをブレンドすることで知られる調香師 Mandy Aftel(彼女の著書も非常に良いので、また改めて紹介する)や、フレグランスジャーナリストのChandler Burr、香りに関するテクノロジーを研究し続けるPeter de Cupereなど、調香という形だけでなく、さまざまな形で香りに携わっているプロフェッショナルたちを紹介している。

この本を熟読すれば、香りというものだけでなく、香りに関係するビジネスまでも広く知ることが出来る。それが、小難しくなく、美しいフォントと写真で紹介されているのだから、申し分ない。序盤に書いたとおり、この本は読み手の知識のレベルを問わないので、フレグランス好きな友人へのプレゼントとしても最適だ。この本をプレゼントされたら、間違いなくフレグランスの沼へとより深く堕ちていくことだろう。