Jo Malone London English Oak & Hazelnut 

My longest-standing favourite fragrance ever
これまでで一番長く愛用している香り

今でも忘れない。Jo Malone LondonのEnglish Oak & Hazelnutに出会ったのは、2017年のこと。表参道の路面店だった。まだ発売前の香りですが、と出してきてくださったのがEnglish Oak & HazelnutとEnglish Oak & Redcurrantだった。どちらの香りも瞬時に刺さったけれど、Redcurrantはわたしの肌では妙に石けんのような清潔感が引き出されてしまい、好みの香りに落ち着かなかった。反して、Hazelnutは肌の上でも香りがさほど変化することなく、むしろ空気のようにわたしを包み込んだ。その香りが忘れられず、発売日に仕事帰りの足で渋谷ヒカリエに買いに行った。

オークのどっしりと深みのあるウッディノートと、シダーウッドの少し埃っぽいようなドライな香り、そして焙煎前の青臭いナッツの香ばしさを、柔らかい空気が飲み込む。ノートとして公開はされていないものの、販売員さんがアンバーが入っていると言っていたのだが、もしかしたらそれなのかもしれない。肌に馴染むにつれて甘みが出てきて、シャープでフレッシュなトップノートから、まろやかな残り香に変化していく。ウッディなフレグランスだが、スモーキーさがないので、よくあるウッディ系の香りの煙臭さが苦手な人にもおすすめしたい。

このフレグランスの特徴は、肌の上でよりよく香る、ということだと思う。ムエットで香るとトップのシャープさが際立ち、平たく言えば「メンズっぽい」香りに感じるのだが、肌の上で香ると数分で角が取れ、格段と肌馴染みが良くなる。

2017年から2021年まで、4年間毎日のようにこの香りを付けていた。数少ない「わたしの香り」と思えるフレグランスで、これ以外の香りにはまったく興味がなかった。香りが軽いので、30mlサイズを常にバッグに入れていた。会社にも毎日付けて行っていたが、同僚には「横を通ると良い香りがする」とよく言われていた。これを付けるとシャキッと背筋が伸びて「オンモード」に切り替えられるので、会社用フレグランスとしてちょうど良い。フレッシュな香りなので、どうしてもこの香りが苦手、という人も少ないと思う。

これ以上自分に合う香りはないだろう、と思うくらい大好きな香りだったけれど、ロンドンに引っ越してからめっきり付けなくなった。この香りを纏うと満員電車に乗る前の憂鬱な気持ちや、オフィスに入る前の気合を入れる瞬間を思い出してしまい、気持ちが妙に「オンモード」になってしまうのだ。香りは記憶と強く結びついているので、こうして気持ちが離れてしまうことはよくある。日本にいる頃は常に戦闘態勢で、それはまるで野生のライオンみたいだったのだが、ロンドンではリラックスしすぎて家猫みたいになっているから、当然纏う香りも変わってくる。今はデイリーフレグランスとしてではなく、ミーティング前など限定的に使っているが、付けるたびに気持ちがしゃきっとして、気持ちだけでも「仕事ができる女」気分が味わえるフレグランスだ。

Perfume is the art that makes memory speak
– Francis Kurkdjian

30ml £55 / 9,460yen : 100ml £110 / 19,030yen