GUERLAIN Herbes Troublantes

Aromatic herbal with lively citrus
朗らかなシトラスとアロマティックなハーブが織りなす安らぎの香り

わたしのフランス語スキルは絶望的だ。英語を独学で習得できたことで調子に乗って、何度かフランス語にもチャレンジしたことがあるが、何度勉強してもまったくもってチンプンカンプンだ。だからGuerlainの店舗でさっとフレグランスを見て回っても、「Rose」とか「Oud」とか英語と同じ綴りの名詞しかわからない。「Herbes Troublantes」なんて、いったいなんの香りなのか想像もつかなかったので、しばらくスルーしていた。ある日なんとなく香ってみたところ、一瞬で完全に心をまるごと持っていかれてしまった。

「悩めるハーブ」とでも訳すのだろうか、そんなアンニュイな名前のこのフレグランスは、アロマティックノートが好きなひとだけでなく、普段あまりフレグランスを付けないひとにも取っつきやすい香りだ。スプレーすると、ほのかに皮の苦味を含んだベルガモットと、フレッシュなハーブが広がる。ハーブとは言っても、シャープな「毟りたての草」的なハーブではなく、やわらかい、角のないやさしいハーブの香り。力強さと青臭さを感じるリアルなハーブの香りではなく、むしろファンタジーの世界のハーブのような。そこにオレンジブロッサムの朗らかさとムスクのセンシュアルさが加わり、ほのかな甘味を感じさせるアロマティックハーブに落ち着く。


この香りを嗅いで脳裏に浮かぶのは、印象画の絵画に描かれる少女たちだ。この香りは、花の咲き誇る芝生に座った少女たちを描くその柔らかな筆のタッチと、初夏(と勝手に解釈しているが真偽は知らない)の空気感を思わせる。香りはあまり変化せず、最初から最後まで、心地良い初夏のそよ風を感じさせる穏やかな香りが続く。香りがやさしく、良い意味でさほど個性がないので、どんなシーンでも付けやすいし、ファッションも選ばない。仕事のミーティングでも、お友達とのランチでも、ひとりのリラックス時間にも、どんなときの自分にもすっと馴染んで寄り添ってくれる香りだ。

やわらかな香りとは言え、これはグリーンなハーバルフレグランスだ。草だけじゃ満足できないのよ!という方は、フローラル系の香りをレイヤリングしても良いかもしれない。ここに入っているオレンジブロッサムはほとんど単体の香りとしては感知できないほど控えめなので、物足りなければジャスミンやローズなどのフレグランスをレイヤリングすると一気に華やかさが増すだろう。また、フローラルの香りが苦手なひと(注:わたし)は、Herbes Troublantesを足すことでグリーン味が加わり纏いやすくなる。

同じGuerlainでも、以前紹介したAngelique Noireは、わたしにとって「気合の香り」であり、休みの日に付けようとは思わないのだが、それに比べるとHerbes Troublantesはどんなときでも使いやすい万能な香りと言える。どちらも大好きな香りなので、ボトルが欲しいと思っているところだが、背筋がしゃきっと伸びる12cmヒールのようなAngelique Noireにするか、それとも足にすっと馴染んで何キロも歩ける靴のようなHerbes Troublantesにするか。一生結論が出ないのだった。

100ml £290 / 46,200yen : 200ml £410 / 66,000yen